この企画がはじまるまで その1

この企画は、JRとはまったく関係ありません。 お問い合わせは各会社へのご迷惑になりますのでご遠慮ください

3月22日 一部リニューアル版 スタートいたしました。


■寝台列車創生のスタート
 始発駅はアタマの中です。
 もともとのスタートは、夜汽車好きの私が、将来も夜汽車に乗りたいなぁと思ったことが始まりです。
授業中のノートの端っこに、夢の列車を鉛筆で描いていたような発想ですから、それを始まりといっていいのかどうかはわかりませんが。
 とはいえ、乗りたいという気持ちと裏腹に、夜行列車はその数を急速に減らしてゆきました。規制緩和の影響があるのかどうか、夜行バスが急速に増え、道路さえつながっていれば、東京からほぼ全国の主要都市へはバスでいけるようになってしまいました。
 夜行列車の凋落は急速でした。最盛期に東海道だけで10本以上あった特急寝台は見る見る減少。周遊券で使えた夜行急行は切符の消滅と前後してほぼ全滅。目的地へ早朝に着いていたいと思ったら、夜行バスか前泊するしかありません。
 このままでは、夜行列車という存在自体がなくなってしまう。そう感じずに入られませんでした。

 もちろん、運営する鉄道会社にしてみれば「やってられない」理由はいっぱいあるでしょう。
一座席一人の長距離列車というのではあまりに回転率が悪すぎます。
何社にもまたがる列車の場合、利益の分配もさることながら、他の会社区間で遅れが出たときに、こちらまでダイヤの乱れを食らうのは避けたいでしょう。
そんなこんなで新幹線ほどは儲からない夜行列車はつぎつぎと減らされていったのでしょう。

 ただし、そういう理屈を理解する気持ちと、旅をしたい気持ちとは別です。
夜汽車の窓から眺める景色は格別ですし、深夜にどこかに降り立つというのでなく、朝まで車内でゆっくりすればいいという安心感もここちよい。乗ってる時間そのものが旅になっているのも楽しい。
 よく夜行列車の時代は終わったとは言うけれど、本当にそうだろうか。古くは北斗星、そしてトワイライトエクスプレス、カシオペア。これの席は今でも入手困難な、いわばプラチナチケット。乗りたい人はまだまだいる。従前からの夜行列車の時代は一区切りかもしれない。でもその可能性はまだ未開発なんじゃないだろうか。だからといって、鉄道会社にねじ込んだって、嘆願したって実るわけはない。むこうだって仕事だもの。
 ならば、いまいちど「こんな列車があったらいいな」という理想の列車を描きなおしてみたい。それぞれの夢や理想のイメージを集め磨きだせば是非乗ってみたい(走らせてみたい)列車のイメージが出来上がるんじゃないだろうか。
 漠然とそんな思いを抱いたまま、可能な限り夜行列車を使って撮影旅行を続けていました。
どんな列車だったらみんなが乗りたくって、僕でも乗れて、会社だって走らせたくなるのだろう、と考えながら。

■夜行列車が使えない
 使えない? 使わない? 使わせない?
 鳥取への足として使っていた「出雲」が消え、早朝の青森へ便利な便だった「はくつる」が飛び去り、北海道の宿でもあった夜行特急が姿を消し、移動が日中に制限されてしまった。夜行バスもあるにはあるが、どうにも体に合わず眠れないので、翌日まるで使い物にならない。なので日中移動するとどうしても一日無駄になってしまう。移動のニーズに対して列車は図体がでかすぎるのかもしれないが、残念でならない。 そのうち道内の長距離バス業者が共通のバス周遊(回数)券でも出したら、鉄道の利用はまた減少するんじゃないかと思えてしまう。
 とまぁ、これは実際に利用できない夜行の話。
もう一つの使えない寝台車とは、女性が乗りづらい寝台車。夜行列車愛好の私としては、他人の寝台券を当人の代わりに取ることがある。とはいえ、特別なルートがあるわけではないので、時間や日程、窓口の込み具合など経験則で買うだけだ。ネットオークションはしない。そうしてとっても、決して喜ばれるとは限らない。雑誌なんかに載っている『夜行列車のすばらしい旅』を期待して乗った人たちはほとんど挫折感を味わって降りることになる。
食堂車があるわけでもなく、個室を出ればくつろげるスペースはまるでなし。トイレは汚いし、連結器の振動は大きい。車によってはなんともいえないこもった臭いがする。女性にとっては旅ではなく苦行ですよ。
昭和40年代の設計をベースにした車両だから、ある程度は仕方ないのかもしれないが、それにしても、ほとんど何の手も差し伸べられないままただ古くなっていくのでは、利用者だって減りますよ。もっとも、友人の中には、それが狙いじゃないかと言う人もいますが。
女性が使えない、というのは、寝台車にとってかなり大きな問題です。女性客を志向していないから男性が中心になる。つまり対象となる乗客が人口の約半分になってしまうということです。その人たちが乗るのが夜行バス。比較的少ない乗客数でも採算が取れますから、よけいにバスがシェアを伸ばす。結果的には寝台列車の減少、となったのではないでしょうか。

ヨーロッパの夜行列車に乗って驚いたのは、座席の寛ぎ感でした。もちろんすべてというわけではありませんでしたが、座席が小さなシェルのようになっていて、さほど回りを気にせず眠れるのです。バスに比べて広い鉄道の車両は、開放感もありますが、不安感も生み出します。そういう落ち着かない感じをかなり減少させてくれるようです。乗り心地の面では新幹線と同じ標準軌(1435mm)ですから、JRの線路幅(1067mm)に比べはるかに揺れません。また、昔ながらのピンリンク式連結器ですからガチャガチャした前後動はありません。(ピンリンク式に戻せといっているんじゃありませんよ。今なら、理想はカシオペアの連結器でしょう最後部の乗っていてもほとんどショックなく走り出してくれます)

話があっちこっちに飛んでますが、要は、女性客をつかまないと寝台車にせよ特急電車にせよ、利用者の半数にソッポを向かせてしまうということです。

■九州でみた旅
そんな折に再発見(!)したのが、JR九州のデザインです。乗客サービスよりも速さを重視しているように見える他社に比べ、水戸岡さんがデザインする九州の車両は、列車に乗ること自体を旅として捉えているように感じられます。
とはいえ、私はもともと国鉄型の車両が好きな人間ですから、奇抜なイメージの九州の車両は必ずしもなじめるものではありませんでした。しかし、それを補って余りある何かを九州の列車に乗っているときに感じるのです。色使いにしても、素材にしても、実にユニークです。
 もっとも、九州エリアにいるときは、あるいみ飽和状態なので、そのユニークさをさほど強く感じることはありません。それを一番強烈に感じたのは神戸でした。阪神大震災の直後、鉄道や道路は寸断され、交通手段はほぼ壊滅状態。人々の移動を支えているのは全国から集まってきたバスでした。瓦礫となったビルや広大な焼け跡は、ホコリやチリが各所を覆い、色彩を意識することさえ忘れてしまうのです。冬のことでもあり、木々の緑というのも寂しい限りでした。そこを走ってきたのはJR九州の真っ赤なバスです。最初は一瞬違和感があったものの、光の方向によっては少しオレンジがかっても見えるバスは実に力強く見えました。
デザイン、が色や形を作るだけのものでなく、人の心に語りかけてくるものなのだと、再発見したのでした。

 そう思って、九州の車両を見ると、実に楽しいのです。たとえば「ゆふいんの森」(Ⅲ世)は、車両と車両の間に橋がかかっているし、円筒形のトイレは、森の中の巨木のよう。何よりクルーが「もてなし」の気持ちで乗客を扱ってくれるのがとても居心地良いのです。車両というハードウエアとサービスというソフトウエアがうまく回転している。そう実感させられました。
この人と一緒に寝台列車を夜行列車をイメージできたら、きっと面白いものが出来る。それ以来、機会をうかがう日が続いたのです。

■夢の共有
イメージ・夢は共有する人が多ければ多いほど、実現への力になる。
それがマイナスの夢ならマイナス方向に、プラスの夢ならプラス方向に進んで行くのではないでしょか。
08年にグリーンスパンが発した「100年に一度の”津波”」という言葉を「”経済危機”」という謎の置き換えを行って発言し続けた総理のおかげで、必要以上にマイナスなイメージを共有したのは、前者の例でしょう。
後者の例はたとえば、「アトムを作れ」という言葉から二足歩行ロボットasimoを開発したといわれる本田技研や、ヤマハホールを超満員にした「東京・大阪三時間の可能性」という講演会をステップボードに。実現に向かった東海道新幹線など枚挙にいとまがありません。
おそらく何の仕事でも作業でもそうでしょうが、仕上がりのイメージが具体的であればあるほど、完成度は高くなります。人参を切るのだって、カレーにするのかお吸い物にするのかで切り方は変わります。完成の具体的なイメージがないままに切りはじめたら、巨大な人参がゴロンとした澄まし汁が出来てしまいます。
また、こういうときに、写真はまさにイメージ写真としての役割りを果たします。澄まし汁を見たことも食べたこともない人たちが分業して作ったとしたら。写真を見て、人参をイチョウ型に切る人、山椒の葉っぱを適当な大きさに千切る人。味はどうなるかわかりませんが、この程度だったら、形だけはそれに近いものが出来ます。味のイメージや共通体験があればもっと強力です。
イメージは、具体的であればあるほど、それを多くの人が共有すればするほどパワフルになってゆくのです。IMG_0002.JPG
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